振り出しに戻る【岡山】

今朝は、川沿いで起床した。
テントのフライシート(雨を凌ぐためのもの)は、
べったりとテントに張り付いている。
結露してしまっている。
フライシートを、張り綱やペグと呼ばれるものでピンと張ってやり、
中のテントと接しないようにしてやればテントが結露することはないのだが、
あいにく下地はコンクリであり、ペグなどを地面に打ち込めないため、
屋根のない場所でテント泊するとたいてい今朝のように
結露してしまうものなのだ。

 

私はテントの入り口を開けて、天気が良いことを確認してから、
昨日買った朝ごはんを食べることにした。
焼き鯖ほぐし弁当149円だ。
半額になっていたから、お買い得。
お腹が減って起きたけど、まだ朝の5時。
朝ごはんを食べ終えたら、再び横になる。
四国一周の時は枕を持って行かなかったんだけど、
今回からモンベルの空気で膨らませるタイプのまくらを導入した。
寝心地は良好で、どうにかまくらに穴をあけないように、大事に使って行きたい。
それから少しの時間が経って、今度は太陽に熱されて汗ばんできた。
今度は汗ばんできて、起きるのだ。
こんな天気のいい日には、お日様に叩き起こされてしまう。
まだ少しだけ眠い。
けど仕方ない。
テントを撤収する作業に移る。

 

荷物をまとめて、後は自転車に積んで。
そうだ、ここは誰もいないから、少しギターの練習をしようかな。
ギターを取り出して、弾いてみる。
川沿いのオープンなこの場所は、全く音が響かなくて、
部屋の中で弾いていたらうるさいとまで感じていたこのギターの音も、
川のせせらぎと同じような音量でしか聞こえない。
それはそれで悪くはない。
川の流れのように
とか、そんな曲を弾けたらいいなぁ。
なんて思ったりもした。
とりあえずは、課題曲を練習する。
EとかAとか、そんなコードを左手で形作る。
右手はピックを持ったり、持たなかったり、ジャーンと上下にストロークさせる。
指で一音一音、そろばんをはじくように弾くのはアルペジオというらしい。
私はそろばん教室に通っていたのに、それはうまくできない。
よって、ジャーンジャーンとかき鳴らすのみである!
ひとしきりギターで遊んで、満足した私は川沿いを後にする。

 

常々邪魔だと思っているギターだが、
持ってきた自分としてはギターを持ってきて良かった!
そう思いたいものだ。
だからこのように時々弾いてやることで、
やっぱり持ってきてよかった!
そう思おうとする。
これが心の均衡を保とうとする働きである。

 

好きな人に振られたりすると、
好きだったはずなのに一転して、嫌いになったりすることがある。
それは、好きなままだと辛いので嫌いになろうとして、
心の均衡を保とうとするのだ。
今私がギターを背負いながら思っていることは、そんなところだ。
ときどき、ギターを弾く自分は、
ギターを持ってきた自分を正当化したいだけなのかもしれない、、、
ただ、まだまだ短い付き合いだ。
もう少し一緒に旅をしてみよう。

 

走っていると、対向車線の車から

 

張ってくだぁーい

 

と声援をもらった。
私は振り向くことはなくただ、右手を上げてgoodのサインを送っておいた。
(おれ、かっこいいぜ)
四国を走っていた時に、トラックの運ちゃんが、
クラクションとを鳴らしながら手を振ってくれたことがあったが、
声援をもらったのは初めてだ。
その瞬間だけ、脚に力が入った。
マラソンする人も、声援もらいながら走ると力が湧いてくるだろうなぁ?
そんな事を考えたりした。

 

今日は、片鉄ロマン街道という、76kmにわたるサイクリングロードの一部を駆け抜けた。
昔鉄道が走っていたところが、サイクリングロードとなっているようだ。
道路の一部には、鉄道の面影があった。
また、この道の良いところは、
登り勾配も下り勾配もあまりないということだ。
鉄道が走っていた道のおかげだろうか。
平坦な道が続く。
車も通らないから、安全に走れる。
そんな走りやすい道だから、たくさんのサイクリングマンが行き来している。
みなさんと挨拶を交わしながら走ると、
かいている汗も気持ちいいものになっていく。

 

昔の駅舎は残されていて、今は休憩スペースになっている。
時代は移りゆき、今はこうしてサイクリングロードになっているけど、
とても良い活用法だね。
当時を知らない私は、昔鉄道が走っていた頃に思いを馳せながら、
自転車を漕いで行った。

 

 

サイクリングロードのトンネルは狭くて、その分音がよく響く。
こんな狭いトンネルに入ったら、思わず歌ってみたくなったり、歌ったりするチャリダーもいるのでは!?
私は、携帯電話の音楽を鳴らしながら走ったりしていた。
でも今は違うぜ。
ぼく、ギターをもってるんだ
トンネルの中で弾いてみると、とてもよく響く。
ちいさく、優しく弾いてみても、
その感じのままで音は大きく、響いていく。
歌っても響く。
けれどトンネルの真ん中でそれをするとなると、左や右を見て、
人が来ないのを確認しながらの作業だ。
路上ライブをやったことがあるような人とか、
ライブで演奏をしたことがある人なら別だろうが、
外で演奏したり歌ったこともない私にとっては、
誰か来ると何だか恥ずかしいのだ。
好きな人の前で初めてパンツを脱ぐ感じとでも言っておこうか。

 

でも、やっぱり自転車は通るし、
散歩のおじちゃんとおばちゃんも通っていった。
散歩している人がトンネルに入って来ると、すぐに分かった。
「コツ、カツコツカツ、、、」
足音でさえ、反響するのだ。
でも私は、ギターを弾くのをやめることができなかった。
それは、私も、足音を鳴らしてこちらに向かって来る人にとっても、
ちょっぴり気まずいものだと思ったからだ。
気にしないふりをして弾いていると、
おじちゃんとおばちゃんが立ち止まってこういってくれた。

 

「優雅ですねぇ。自転車で来て、ギターですかぁ」

 

えぇ、ここは涼しくて気持ちいいですから。
そんな優雅なやりとりをすることができて、ほっと一安心。
優雅とは、
「上品でみやびやかなこと。やさしい美しさのあること。また、そのさま」
とのこと。
生きてきて初めて言われた言葉だ。
鼻がピノキオのようになるぜ。

 

昨日まさやにもらった高瀬舟という羊羹を食べながら、
向かう先は2日前に出発した私の家だ。
また、振り出しに戻ってしまう。
理由として、どうも自転車の調子が良くない。
ペダルを1回転させるごとに、ゴリッという感触が脚に伝わって来る。
自転車の調子が悪いと、乗っていてあまり楽しい気分になれない。
一度家に戻って、自転車を直そうと思った。
四国を走っていた時も、若干症状が出ていたが、
今回乗って見て、だんだん悪化してきていると感じたため、
修理が必要だと判断した。
帰って父に聞くと、クランクのベアリングがなんかがダメになっとるんじゃろう、
とのこと。
部品なら(古いのが)あるから直してやる、ということなので、
直してもらおう。
この旅のために買った自転車じゃないからなぁ。
40年近く前の、とても古い自転車なんだ。
何かしらトラブルが起きるのは仕方ない。
でもトラブルを抱えたまま走りたくもない。
明日は自転車を直して、それから大阪へと向けて走っていこう!

 

 

今日は、家に帰って来たので前に勤めていた職場の話でもしよう。
私は外国人労働者も多く働いている食品工場で働いていた!
中国人やベトナム人が多くいる工場だ。
今回はベトナム人が主役の話だ。
そのベトナム人は30代で、男だ。
そいつは悪い人に、
トイレに行くということは、日本語でセンズリに行くと言うのだと、
教えてもらったらしい。
だから私に勢いよく、

 

「そうサン!わたしセンズリいってくるネ!」

 

と言ってくる。

で、そいつは頭のいいアホなので、
センズリという言葉の意味を理解しながら”わざと”間違えたふりをしているのだ。
だってそいつはこう言っていた。
「ワタシセンズリしません!奥さんいるからダイジョウブ!」
ちなみにそいつの奥さんは、同じ職場で一生懸命働いてる。
「そうか」
私はそう言った。

 

ある日、同僚と話ししていると、
「あれ?あいつどこ行った?」
という話になった。
「名前が思い出せんなぁ、、、あのセンズリ、、」
「もう、センズリでえかろう」
「そうじゃな。あいつは今日からセンズリじゃ」
その日から、そいつの名前はセンズリになった。

 

 

◆Next







 



2 件のコメント

  • コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。

    日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)